恥じらい/千波 一也
 


風に運ばれて
なつかしい匂いが
辺りを
湿らせる


葉の裏
こもれび
ガラスの小瓶

窓枠
ベンチ
まっすぐな歩道



言いかけた、名前



少しのあいだ
すなおに
なって
立ち止まり

なつの
健気さを
むねに吸いこむ



誰にもいえない
匂いのなかで

言葉のなかで






戻る   Point(4)