眠れぬ森の/石瀬琳々
 
 (雫がすべってはこぼれてゆく
  夜だ わたしだけの夜がはじまる)


眠れぬ森の月が落ちて神話になった
満ちては欠けて欠けては満ちてゆくもの
星はまばたきのなかに流れてゆく


 (あなたの胸のうちにわたしはそっとくちづける)


夜は眠れぬ森につれづれ語るものがたり
姿を変えて夢のいのちを変容を、記憶を生きる


わたしは何になるだろう たとえば夜露
たとえばあなたの頬に流れる涙
こぼれてもうかえらない
こぼれてかえらない虹 遠くあふれてきらめく


 (夜の果てではいつもひとりであるように)


あなたは知っているだろうか たとえば風

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