ナニカ/草野大悟2
と掃除を続けていた。机を持ち上げ、前を向いたままで教室の後ろまで運ぼうとした時、誰かが足を掛けた。優太は、そのまま、ドン、と倒れ込んだ。
「転んでねーで、ちゃんと運べよ、学級委員長」
蔑むような声が頭上から聞こえた。声の主は、冬休み前まではあんなに仲のよかったサッカー部の副キャプテン園田だった。優太は、園田を一瞥し、立ち上がると黙ったまま掃除を続けた。優太がモップを使って廊下を拭くと、女生徒が薄ら笑いを浮かべながらバケツの水をぶちまけた。優太は、何度も何度もモップに吸わせ、水を取り除いていった。黙々と作業を続ける優太を見下すように見つめているのは、去年の夏、優太に交際を申し込んで断られた女
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