ナニカ/草野大悟2
 
ざわついていた教室が水を打ったようになった。返事をする者は誰もいなかった。去年まで、「優太、この前のサッカーの試合凄かったじゃん。ハットトリックなんてJリーグでもめったに出ないのに、やっぱ優太は凄えよな」と、周りに集まってきていたクラスの全員がシカトを決め込んでいた。
 学活の時間になった。
 優太は司会を担当し、冬休み中の生活についての反省検討会を行った。
「まず、冬休み中の生活態度についての反省点から意見を求めたいと思います」
 優太がそう切り出した途端、
「僕達に訊くより、優太が言った方がいいんじゃない」
という声が聞こえた。呼応するようにクラスのあちこちから声が上がった。
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