ナニカ/草野大悟2
 
なった。野津は、子ども達を連れて荒木警察署に向かった。
 霊安室に安置されている理沙を見たしのぶが、「お母さん笑ってるね。きれいだね」と言って大声をあげて泣き出した。優太は、じっと涙をこらえていた。
 翌日の葬儀は家族葬で行われた。
 理沙の母親が声を潜めて泣いていた。子ども達は声を上げて泣いていた。棺桶に収まった理沙の顔には、まるで『ナニカ』から解放されたかのような穏やかな笑みがあった。一日一組だけの通夜は滞りなく終了した。

「奥さんね、救急車の下に潜り込んだんだって?」
 通夜の翌日、群れをなして告別式にやって来たマスコミの一人がいきなりこう切り出した。
「突然何だ! 第一、あ
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