ナニカ/草野大悟2
 
、と笑った。
 エレベーターに女を支えて乗り込み、部屋の前まで連れて行った。女がのろのろとショルダーバッグから鍵を取り出し、ドアを開けた。野津は、女を支えて部屋の中に入り、後ろ手でドアをロックした。女は抵抗した。手足をばたつかせ、泣き喚いた。ビンタを五、六発張っても激しく抵抗した。
 野津は、警察に被害届を出すようなことをすれば映像が流出することになる、そう言い包(くる)めた。
 翌日、部室に行くと、理沙が一人で本を読んでいた。
「野津くん、あなた、あの子やったでしょ?」
「あゝ」
「んで、どうだった?」
「まあな」
「あの子の家、四国の名家だって知ってた?」
「知らねぇよ、そん
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