ナニカ/草野大悟2
田沼は必死の思いでそう叫んだ。
「冷静になって下さいだと、この野郎。俺達をメチャクチャにしやがったくせに、偉そうな口きくな! 何様だと思ってんだよお前ら、お前らこそ市民の暮らしを蹂躙する権力そのものじゃねぇか!」
子ども達を二度とマスコミの晒し者にしないための、野津の精一杯の芝居だった。
「失礼します」
大きな声がして、個室の引き戸が開いた。無精髭を生やした男が現れ、
「お客さん、他のお客さんの迷惑になります。今日の所はお引き取り下さい」
凜とした声で一喝した。
「オーナー、いつも使ってやってるのにその言い草はなんだ、随分じゃないか、えっ!」
野津が絡むふりをした。オーナ
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