カレーの庶民 ★/atsuchan69
たった今、水とルーだけのカレーをアルマイトの鍋で作ってる途中だ。煮えたら、茄子とキャベツの野菜炒めをそこへぶち込んでやるつもりだが、男の料理だし、丁寧に作るつもりなど初めからまったくない。肉がないので竹輪と蒟蒻を指でちぎって鍋に入れた。白いペンキの剥がれた窓枠に、小さなヤモリが張り付いている。外は雨だ。閉めきった夏の家はスチームサウナみたいになっていて、窓という窓はぜんぶ曇っている。扇風機がひとり淋しく風を送っているが、蒸し暑くて敵わない。水冷式クーラーならリビングに設置してあるが、あいにくと此処は飯を食べる場所だ。そもそも避暑の家にクーラーがあるというのもなんだか可笑しい。それでも冷蔵庫を開ける
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