不海知/ねなぎ
 
あの水平線の向こう側と
言うけれども
水平線は
向こうには無いのかも知れないと
眠るような
丘からの眺めに
呟いた

遠くで静けさが
音している
丘の上には
段々の
畑の向こうに
トタン屋根が
照り返されて
蒸されたような
土と草の
混ざり沸き立つ
匂いに揺れている

特に誰も
省みることの無い
取り残されたような
海は
薄く
雲の棚引く
先へと
溶けるように
記憶の中で
混ざっている

あの町の
眠るような
海を
誰か
見ているだろうか

風は
ベトつくような
生臭さを
巻いて
微睡んでいるように

どこかで
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