君のダンスは鮮やかだから/智鶴
色味の無い世界に
たった一人だけ鮮やかに舞っている君
美しくはないよ
汚れていないだけだ
眺めているだけで鮮やかになれる気がするよ
ゆっくりと砂になっていくように
僕は足元から錆びていく
灰黒く劣化したビル群の中を
足早に通り過ぎる灰色の人
皆一様に襟を立てて口元まで隠しながら
手にした薄っぺらい箱に指を翳して
誰とも目を合わせない
その暗い穴のような目で
水銀色の画面を舐めるのに必死なんだ
俯き加減で歩いているのは
きっと
足元に潜む金色の蛇を恐れているんだろう
音も痛みも無いままに
咬まれれば砂になってしまうから
君は例えば
真っ赤な薔薇の様
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