蚊の悩み/イナエ
 

            祖父は腕に蚊が止まると
            自分の血を暫く吸わせ
            ふっと息を吹き掛けて逃がす人だった

人と付き合うことは結構難しい
 
一瞬の隙を突いて血を頂く
ほんの一滴 
いや 
一滴は多すぎて 掌が迫っても腹が重くて逃げられない
蚊の涙ほどでいい

抗凝血作用のある物質を唾液と一緒に注入すると
皮膚が赤く膨れて 
それが人に嫌われるようだが
痩せるホルモンかアルカロイドを見付けて
少々の血と交換するという方法ならばうまくいくかな

蚊は
卵の時から親
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