小屋/草野大悟2
におずおずと声をかけた。
「どうも、毎日、ありがとうございます」
彼は、少し驚いた様子で
「い、いえ……」
そう応えた。そのとき僕は、明るくなった小屋の中で、初めて彼の顔を見た。そこには涙の跡が残っていた。澄んだ瞳の中に、熱のようなものが潜んでいた。
僕はじっと老紳士の瞳を見た。他の客がけげんそうな顔をして帰ってしまった後、彼は椅子に座り、長い沈黙のあと、思い切ったように、こう切り出した。
「十三日間、本当にいいものを見せて貰った」
僕も、ゆっくり、彼の隣の席に腰を下ろした。
「見ず知らずのあなたに話すのもなんですが、実は、五ヶ月前に会社が倒産しましてね、それと重なる
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