小屋/草野大悟2
ロ〜、シロ〜」
大声で叫んだ。
五つ並んだ水入れのポリタンのわずかな隙間から、シロがよろよろと出てきた。
右の後足にナイフで裂いたような傷があった。その目はいつもより深いルビー色に濡れて、泣いているようだった。他のウサギが入れない狭い隙間に、シロは逃げ込んで隠れていたのだろう。体が小さなこともたまには役立つな、脈絡なくそう思った。
「おまえ、小屋の鍵はちゃんとかけたんだろうな」
先生は僕を睨み付けて言った。
「あ、あのう、昨日は用事があって小屋には来ていません……」
「だからぁ、鍵だよ、カギ! 鍵をかけたのかって訊いてんだよ」
「えっと、えっと、土曜の午後に学校に来て
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