小屋/草野大悟2
 
大会があるんだけど、見に来ない?陽子、リボンとクラブ両方に出るんだよ」
すこしばかり顔を赤くしていった。
 ウサギを見せたお礼のつもりだったのか、
それとも、お別れのつもりだったのか、今でも僕には分からない。
「は? えっ? しんたいそう……」
僕も顔をまっ赤にして、(行くよ、絶対行く)心の中でそう返事し、うなずいた。

 八月九日、僕は、いつものように一人で県総合体育館に行った。
 体育館の周りの木立では、ワシッワシッワシッとクマゼミがうるさく鳴き、空はまっ青で、太陽がギラギラ照りつけていた。
 バスを降りて体育館の入口まで歩いただけで、蒸し暑さに押し潰されそうで、
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