ある失踪/梅昆布茶
その場の辻褄合わせの生き方では永くは続かない
刑務所の壁の外にすぐに自由があるわけではないのだ
善悪を語る立場にはまったくない人間ではあるが
甘くたやすい方向へひとのこころは動く
奈落からつぎなる奈落へと
こころを抜きにしての自由はない
社会的更正を語る事は難しい
富は潤沢に在るようにみえて
貧困は覆い隠されさらに窒息してゆく
タクは失踪した
希望にも似た欲望を抱えて
もう手に入らないかもしれない
様々に身をやつした自由というものを置き去りにして
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