海/梅昆布茶
 
こころの透明な日に海がやってくる
あてどもない迷いに逢いにやってくるのだろうか

迎えるすべをしらない私はとおい砂浜で貝を観察したり
でも思い出に似た貝殻をさがしてみる

光沢を失った風景のなかに残照を見出そうとでもいうのか
解剖学の標本 詠みさしの本の頁 きみの結んだ髪のにおい

わたしたちは窓枠をはなれて飛ぶいきもの
もともとかたちなんてありはしないのだ
遠くを求めるほど失速してゆくはかなさがすきなのだ

逆説の薔薇をあなたからもらった日
私には海はなかったし風もなかった

ただあなたの海に吹く風を感じた

生きる事はその風を感じることなのかもしれないとおもったのだ




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