パンディ・バンディと紳士/佐久間 肇
そうして、大きいほうの黒い衣服の紳士が、わたしの真鍮の箱を開けるのでした
汚い色をした数々のビー玉が、一瞬だけ光を浴びてキラリと光り
そして、パアァッと、散ってゆく
――― 風が 笑わなくなりました
その代わりに怒ることも なくなりました ―――
小さい小さい紳士は、にこにこしていた顔を崩して、
わぁぁぁん、と泣き始めました
大きな紳士は、小さい紳士をなぐさめながら言うのでした
――― ここには 風がある とっておきの ―――
わたしは、縁が赤い、おもちゃみたいなメガネを持っていました
それは正しく、おもちゃのメガネでした
そのおもちゃのメガネを大事に大事に、しまっていたのですが
パンドラの箱は、口が軽いから、すぐに開いてしまい
メガネを逃がしてしまうのでした
打ちつけられた、風に
ありそうでありえない、あるがままの、
脅迫とは呼べない憂鬱が勝り、逃げてゆく
戻る 編 削 Point(2)