夜、入り江にて/
平井容子
今日、月がもも色で
口をつぐむように鳴らす笛が
灯台の灯(ラフ)をかすめて
指どおりのよい
髪にまきつく
入りくちは浅くなめらかに
奥はとおくするどい爪のかたち…
荷をほどくように
飽きるほど泣いた光たちが
いつまでも水平線にたむろしている
やさしいものごとを運びながら
のくのくと規則ただしく波がうち
だれのためにも生きていけない夢が代謝する
戻る
編
削
Point
(13)