サウダージ No./アラガイs
喜びは誰に捧げるのだろう、肉付きのいい母親の頬は弾けていた。携帯の写真を覗いては閉じる。チョコレート色に焼けた力強い腕。ながれる汗は距離を忘れ、遥か故郷の土を抱きしめていた 。
できるだけ荷物は軽く…しかしポルトガル語のアナウンスが頻繁に途切れるのはなぜ?。巻き毛を束ねた5〜6才くらいの少女はキティちゃんをしっかり握りしめている。眠っているのか…母の腕にすがり、たまにその大きな瞳を開いてはわたしの顎髭に目をやった。
イヤホンを外し備え付けのヘッドフォンをあててみる。
**もう少しだよ。
17才を過ぎたばかりのM君の場合は哀し過ぎた。酒に酔っては暴れる父親を刺し殺した。彼は出所
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