五月の欠片/nonya
 
けない自分がもどかしくて
温くなった炭酸水を飲み干した

いつも五月に置いていかれる
心地好さに埋もれてしまう
伏し目がちの不純物のような
まだまだ透き通ることができない私を

五月の風はお構いなく
夏に向かって吹き流す





南風の心地よい圧力が
シャツの胸を凹ませた
舗道に散らばった光の鋲を
しかめっ面で踏み潰した

僅かに夏の体臭を漂わせながら
控え目にスキップする五月と
スクランブル交差点の真ん中で
すれ違ったような気がした





今日一日を

空や
風や
光や
鳥や
花や
あなたや
わたしや

そんな言葉を使わずに
表わすことが出来たなら

わたしは詩の言葉をすべて
五月に預けて

初めて見たような顔をして
季節を眺めることができるのに




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