五月の欠片/nonya
けない自分がもどかしくて
温くなった炭酸水を飲み干した
いつも五月に置いていかれる
心地好さに埋もれてしまう
伏し目がちの不純物のような
まだまだ透き通ることができない私を
五月の風はお構いなく
夏に向かって吹き流す
*
南風の心地よい圧力が
シャツの胸を凹ませた
舗道に散らばった光の鋲を
しかめっ面で踏み潰した
僅かに夏の体臭を漂わせながら
控え目にスキップする五月と
スクランブル交差点の真ん中で
すれ違ったような気がした
*
今日一日を
空や
風や
光や
鳥や
花や
あなたや
わたしや
そんな言葉を使わずに
表わすことが出来たなら
わたしは詩の言葉をすべて
五月に預けて
初めて見たような顔をして
季節を眺めることができるのに
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