14 の ソネット♪/ハァモニィベル
 
憶とともに、
ジンジンと、悴んだこの手に、はっきりと濃く蘇る。





   5

  薔薇の想い出

未来が、予期もせずに、ある日、突然、記憶の中で蘇ると、
樽の中の血を舐めた貧血の薔薇は、力を失い、逆さまに垂れた。
かつて、アレ程冷酷に、鉄の味を教えた、あの鋭くて敏感な棘が、
その、か弱くも強かな薔薇のポトポト垂らす、、

優雅な悲鳴にも似た、
溜り墜ちる、、血のインクを使い、
寂しすぎる想い出を、一つ、また一つ、と、
白い意識の上に、黒々と記しはじめる。

いつも闇夜に怯えたアノ匂いも、・・・今や、モノクロームとなった、

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