シーサイド/木屋 亞万
 
波打ち際に重油を撒いた
小さな見えない火が揺れる
夕焼けみたいだな
波は引いていくのに
火は消えない

水際で阻止された汚染
陸地は汚れなかったけど
海はめらめら
汚れたままだ

日が沈む中
熱を持つ

表面を撫でるだけの波は
いつも砂浜で戯れて
尖ったものをまるくする
砂を頽落させていく
平らに平らに舐めていく

燃えてるものは燃えたまま
汚れは汚れたままうすく
うすく広げて
うすめては
沈んで
見えなくなっていく

水は腐るのではなくて
生き物の住処になるだけ
死すら汚れになりきれない
清潔な水というのはさびしい

戻る   Point(2)