岐路/ヒヤシンス
 
屋根裏部屋の閉塞感はそのまま心の閉塞感となり、机上の花も朽ちるのだろう。
壁に掛けられた絵画は真実から遠く、庭に面したテラスへの入口は閉ざされた。
ただ一つ、静寂を奏でる時の清流だけが私の癒しとなり得るか。

心とは厄介なものだ。
欲求、渇望、羨望、憧憬、喪失、諦観、寂寞。
年月と共に薄れゆくもの、逆に濃度を増してゆくもの。
神々しい落日の中、希望に満ちるもの、淋しさを募らせるもの。
自身でさえ触れられぬ心に支配され、決別すら出来ず、人生を共にする。

それならば私は信じよう。いや、信じる事しか出来ない。
閉ざされた全てのものを解放し、黄昏る思考はそのままに、感性の翼を広げよう。
現実の世界に真実を探求し、表裏一体、愛する言葉を掲げよう。
全ての人々に潤沢な日々が訪れるように。
祈りの中で全ての魂が解放されるように。

屋根裏部屋の傍観者であった私の鼻腔に机上の花は香りを放ち、
全ての扉は開かれた。もはや傍観者ではいられない。病める魂の所有者であった私に、
今まさに人生の岐路を示す正しき道が現れ、白く美しく輝いている。

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