なかなかむらむらこない/
末下りょう
張り巡らされた草木の隙間、
高層ビルの一群が遠くに見える
足の痛みを我慢して
立っている
きみの家の緑色の屋根を見つけようとしたけど
方角がちがった
きみは髪を結んで
黙々と食器を洗っている
じきに雨が降れば
オタマジャクシが森に拡がり、ヒキガエルたちが目を覚ます
体表にビー玉みたいな雨粒を受けながら
抱接の重量をリコールするために
それにしても中村は来ない
なかなかむらむらこない
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