夜の蜘蛛/イナエ
 
 1
指先の吐き出す音は
宇宙で絡み合う
としても 
糸の無い繋がり
華やかな彩りも 
時の経過に
消える夜の虹
孤高の富士は
大地に根を張り
世界の山々と融合するけれど

彼方から降りしきる情報は
脳内に吸い寄せられ 
パチパチ爆ぜて
未熟な願望に呼応し 共鳴して
出現するとしても
幻想の風景

音の先に見詰めあう眼は
手を延ばせば遠ざかり
あるいは
指がぶつかり合って
ノイズに揺れ 風に揺れて
淡く宙の淵に沈み

崩壊した幻想の 
亡骸は大地に渦巻く風に吹かれ
宙の渚を彷徨い 
銀河の醸し出す波へ消えていく


 2
国道を走る
[次のページ]
戻る   Point(13)