25歳の夏〜39歳の春/オダ カズヒコ
に果てるのだと
隣にいる誰かが言った
ぼくはもう一度
この世の果てた場所に立ってみた
不気味な雲海が
あまねく足元を覆い尽くす
言葉が出なかった
黒々としたものに飲み込まれ
その先には
野を這うような無しかないのだ
人間という人間が
とてもいじけた存在で
可哀想に見えてきた
為すべきことも理解できずに
欲望と怠惰の間を
ただ振り子のように行ったり来たりするだけ
まるでヤジロベーのように
虚しい
だれも感じるように
ここに世界はなく
もう一掴み先の向こう側にそれはあるものだ
お前はここへ何をしに来たのだと
隣にいる誰かが肩を掴んできた
まるで石灰に触るような男の手を振りほどき
血のように温かく流れ出す言葉を探した
昨日までとは違う
新しい世界を歩き出すために
ぼくはまた
地平の果てを見に行くのだ
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