られつ/左屋百色
ので私は走って逃げて電車に乗りそ
のまま知らない駅で降りた。ガヤガヤとう
るさい改札を抜け空を見上げると私の左耳
はなくなってしまった。駅前へ出ると右が
地獄で左が冬景色だった。こんな町もある
んだな。しばらくまっすぐ歩いていたらざ
ぁざぁと雨が降ってきた。いや雨ではなか
った。それは時計の針だった。世界中の時
計の針が降ってきたのだ。私は慌ててコン
ビニの中へ入った。猫が言っていたのはこ
の事か。気づかないで歩いていた人たちは
みんな時計の針に突き刺され死んでしまっ
た。誰もいなくなった町は右がフィクショ
ンで左がノンフィクションだった。コンビ
二を出ると誰かの左手が落ちていた。私は
なくなっていた自分の右手にそれをくっつ
けて詩をかいた。
ごらん、
日常にある
まだまだ描かれていない
性や暴力や花や孤独や右や左
切り取ってごらん、
日常にある
まだまだ描かれていない
詩のられつ
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