春の果実/
もっぷ
ないこの在り方
ふと人の世を悟る瞬間が訪れた
春のせいだ
春のせいだ
春のせいだ
と嘘がついに力強い味方をみつけて
私の体にすこやかに浸透してくる
気がつくと嘘は嘘ではなくなり
本当に悲しくなんかない私が
確かに隣人であることが感じられた
少しだけ躊躇ったのちに
私は真実を捨てることを決めた
悲しさを余裕で手放してみる、すると
(春のせいだ
ほがらかはこの春に私の果実となっていた
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