つくしの佃煮/
末下りょう
グループホームで暮らしている
ぼくのことはおぼえていない
耳も遠くなった
このまえ会いにいったときは
わたしのお金盗んだでしょと
ばあちゃんに言われて
いくら盗んだのか聞いたら
二千円と言うから
それを返した
ばあちゃんの手はかたくて
いまも日に焼けている
風の強い河川敷で
ばあちゃんが
夕陽がきれいだよって言ったのを
おぼえている
でもぼくは
夢中になって新しいつくしを
みつけていた
春だった
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