狼たち/千波 一也
海を学んでいる
残酷な狩りは
残酷ないたわりの中に生まれる
勝つも負けるも
至極平等な真実ならば
誰も、
介入してはならない
誰も手を貸してはならない
脚色も
口添えも
一切を捨てて
傍観者にすら成り得ない
誰も、
狩りの定義からは
逃れられない
遠吠えの森に
またひとつ、涙が
こぼれてしまったようだ
煙るしかない夜の言葉に
少なからずの同情を、胸に秘めて
咆哮たちは
互いにわずかに
踏みつけ合う
そうすることが尊いのだと
昔、賢者が語っていたと
湖面の三日月が
揺れているから
従順な
けものたちは
尾を揺らしながら
瞳の中に
疾走を
灯す
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