クリーチャーズ/末下りょう
ぼんやり眺める
男は映画のエンドロールに
流れる曲を聴き流しながら
誰かが必死で涙を流そうとして
結局涙を流せないでいる夜の涙から
吹き込む風を乾いた網膜がやり過ごせずに
流す涙のユクエワシレズ
戻らない(女)は、
誰にも拾われず
熱にうかされた
人波、すり抜け
ユクエシラズ(女)は
夜の海の浅瀬の底の沈没船のような
ショベルカーに
触れ、泥まみれの
埋立て地に
戯けて、よろめき
ころび
ほころび
溺れたふりで
そっと
さめたふくらはぎに触れてくる
世界と、目配せを交わす
落下するなら
すべてに遅れながら
分解する泥の
クリーチャーズを 、
別世界に贈る
TAXI、は空車から回想に
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