二十一世紀を燕が思う/イナエ
 
 羽を開いて滑空する 元気な姿で応えたものだ 

人間は巨大な都会に集中して 村の人家が少なくなったのだろう 歓迎してくれた村のこどもたちの姿が見えなくなり その少ない人家も 適度なぬくみを持ち土の張り付きやすかった軒の壁は 固いコンクリートになって 寒暑の差が激しく営巣に適した梁は消えて適所探しもままならない 巣立つ寸前まで成長させて雛を襲うずるがしこい蛇は少なくなったけれど 水田も少なくなって 豊富にいた羽虫は少なくなり 子育てに必要な餌も 遠くまで採りに行かねばならなくなった

ようやく巣立った子ツバメが数羽 羽をばたばたさせる稚拙な飛行で餌取りするのを眺めていると 不意に生命伝承の
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