二十一世紀を燕が思う/イナエ
それは地球環境と生命保存の本能の間で 気の遠くなうような長い年月をかけて作り上げられた習性。長い飛行距離とエネルギー消費の少ない飛行のできる翼と飛び方は 遙かな祖先からの経験の継承と あまたの選択肢から選び抜かれ 洗練されて 本能にまで高められたもの。
島毎に異なる人間の家の作りや暮らしを検討し 幾つもの海峡を渡って 巣作りに適した土と 育児に適した餌の豊かな島にたどり着く。地球の自転が作り出す空気の流れを利用するとしても 危険の多い長い旅 人はそれをワタリと言う。
春 この島に着くと 我々の飛ぶ姿を見上げる人々の顔は 喜びに輝いていた その姿を見れば 長い旅の疲れも忘れて 羽
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