つばさが消えない/千波 一也
 


赤い目をしたうさぎの耳に
月から
はぐれた言葉が落ちる
ので、
偽らざるをえないだろう
いつか
偽らざるをえないだろう

うさぎは白くて赤い目をしている
茶色や黒やまだら模様もあるけれど
昔、
小屋からの脱走を試みた挙げ句に
自らの身を半端に裂いて息絶えた
あの
赤い目の白うさぎが
わたしを離れない

「どうしてだか僕は、ほかのみんなとちがう気がするんだ。おまえは死んだのだから、そこにいてはいけないって、お月様が言ってたし。ねえ、死んだ、っていうのは、どういうたぐいの悪さのことだろうね。僕はどんな悪さをはたらいたのだろうね。」

純真無垢な問いかけは
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