浮かぶ/松本 涼
 

何も浮かばない夜に
ヒラヒラと
僕は浮かぶ


それから宙を探って
宙に入り込み

痛がる景色を
置き去りにして

道の無い空間を
飲み込んでいる


光りのあぶく
闇の螺旋

記憶の振動
温もりのこだま

想像の現実
現実の幻想


そこに在るもの
そこに無いものたちが

膨らみ切って薄色に
やがて無色に



何も浮かばない夜に
ヒラヒラと

浮かんだ僕は
いつしか僕の

おなかの中で
眠っているのだけれど




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