塀のある暮らし(2014.2)/新嶋樹
 

今、君の毎日の働きを見ながら
掃除や洗濯や料理を見ながら
暮らしの味をおいしく呑みこんでいる

日々生きていくことの
日々の部分の細かさに
おえつする日々だったけど
それを「つまんない」と言うことは
生きてる君を殺す行為だ

変なオブジェをつくってひとり
ひとしきり笑ったあとに
減った腹を満たす
その満ちる腹は君の手つきから生まれる

君は人生を
丁寧に生きているのだ
人ひとり分の腹の外に
もうひとり分入れる塀をつくって

その気高さを見ながらにして

いったいなにが楽しいの
などと聞いてよいものだろうか
人生を雑に生きてきた者の
つまらないオブジェが笑っている

暮らしの味を知る
塀づくりに加わる
今日の次に明日が来る
そのために眠る
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