椀のなかの尻/手乗川文鳥
 
痺する、去る坊と嬢が両手で手を振る、去る爺と婆が眼を瞑る、去る父と母が手を取る、手を取ろうとして、消える、崩れ落ちる階段に縋る、がらんどうのお堂で一人うずくまる。暗黙。
沈丁花けぶる、くすぶる煙管に紅が差して煙が陽光に傾く、悠長な睫毛が濡れる、踏み交わして伸びた影の縁に踊る娘らが沢山いる。あちこちに緑色にくるくる回って腕を広げて。ほつれて。
穿つ肺臓に祈祷を通し、尻皮を剥かれた鹿が裏山で鳴く、清廉と呼ばれた家は潰れ、自慰を知らずに育まれ、疎まれ、やがて炸裂する反言、反言、滲み月面が楕円、白々しく吐く嘘は可憐。
よるべない緑に娘ら降る。
よるべない畔に娘ら溢れる。
よるべない滅びに娘ら舞う
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