みじかい慕情 五篇/クナリ
 

自分は布のような人間だと思っていました
汚れ破れても縫いつくろえば
ほとんど元通りになって また歩き出すような

自分が実は紙のような人間だと気づいたのは
あなたに出会ってからのことです
切り貼りをくり返して
いつの間にか
取り返しもつかないような 私の別物。





■抵抗■
私のとがった先端を丸くくるんで
私の濁った末端の底まで見通しているあなたに
私がしてあげられることなんてあるとは思えない

せいぜいもっととがったり
ひどく汚濁してみせて
驚かせるくらいのことしか
せめて。





■むこう側■
指一本触れられない人を
指一本触れられないまま
愛している。


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