砂の城/千波 一也
 

砂の城は
潮風にだけ開かれている

砂の城は
形あるものを招きはしない

そのことに
気づいたものたちは
ゆっくり砂へと戻りはじめる

そして
それらの隙間へ
およぶ視線たちも同様に
ゆっくり砂へと戻りはじめる


砂の城は
空洞だらけの構造だから
なにものも閉じ込めたりはしない

それなのに
出口を求めるものたちが
いつの間にか、ある


生まれつきの砂などない

たったひとつのその真実が
孤独の層を
悲哀の層を
築きあげてゆく

崩れることを繰り返しながら
築きあげてゆく







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