没落/深水遊脚
 
 洋酒に囲まれ 馴染みの客にその日のお酒を出す まだ来てくれるだけでも嬉しくて 好きなもの嫌いなもの こだわりと痛点 あれこれ自然に入ってきて その日のお酒というのも 彼が欲したものと私が差し出したものがずれることはない と信じることは ここに立ち続けるために必要な思念

 ふと お味噌汁がいいと呟く パックのなめこと 大根とおろし金 塩蔵ワカメ これらのものは常にある レタス ローストビーフとチーズの切れ端 それらも始末するけれど それらをまかないにしても あまり心が休まらない 同僚の受けも悪い 鰹節とカンナを勝手に持ち込んでいた者もいた 金にだらしがないのを見抜いて 適当な理由をつけてクビ
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