トーチカ/千波 一也
いい
いずれの理由でも
特別に理由などなくても
おそらく
二度目はないだろう
何の気持ちもないままに
迎える二度目はないだろう
安易な言葉の総てを受け止めるようにして
安易な言葉の総てを拒絶するようにして
風穴は今この時も音を立てている
いまや
定かにはしがたい明るみの中で
拭えぬ強固な黒点を背負わされた無数の一瞬が
海風に運ばれて聴こえくる
逃れようなど幾らもあるというのに
晴れ渡る暖かな冬の一日だというのに
それを
彼ら、を
彼女ら、を
待たせているのが見えてしまう
こんなに遠い
こんなに浅い
海岸線を走っていても
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