トーチカ/千波 一也
 

海岸線を走ると
凍てついた汽水の上に
オオワシが
見える

車通りのまばらな国道に吹く風は
きょうも横なぐり

どんなに晴天だろうと
いや、澄めば澄むほどに
ハンドルを
とられる

海風に弾かれた雪の隙間からは
冬をしのぶ草たちの
鎮火の色合いが見えて
やがて
ぽつりぽつりと
人家が姿を見せ始める

かつての
繁栄を証す看板たちの
役目を終えた形も
姿を見せ始める

トーチカが見たければ
さらなる海岸線へ
赴けばいい

ロマンスのついででも
メモリアルのつもりでも
知らずのうちでも
興味本位でも
さらなる
潮騒へ
赴けばいい
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