ホムンクルス/大覚アキラ
うなゆっくりとした瞬き
カラーコンタクトみたいな薄茶色の瞳
そういうものすべて
きれいさっぱり忘れてくれ
いつの日か
きみが
ぼくのことを忘れてしまった
という記憶さえ忘れてしまって
ぼくの名前を聞いても
何一つ思い出すものがなくなってしまった頃
真冬の海岸で拾った小さな貝殻
居酒屋の婆さんがくれた飴玉の包み紙
破れてしまった片方だけの水色の手袋
そんな
ゴミみたいなものばかり
きみに送りつけるよ
ゴミみたいだけれど
ささやかなヒント
ゴミみたいだけれど
記憶の発火点
きみの
頭の中に
ちいさな
とてもちいさな
線香花
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