/紅月
 

相当する言葉もないまま、
黒く透けた母や、父が、
何度も、芽吹いたり、
刈られたりする、

やがて、
しらないひとのくにから、
たくさんの羽音が聴こえるだろう、
俯瞰が群生する水際の、
明度、影が語彙をもつ白昼のさなか、
外人でありたかった私たちの黒い瞳がこぼれ、
外人である私たちの青い瞳がこぼれ、
森の血溜まりのなかに転がる、
転がった、瞳が、
一斉に割れ、
青い瞳から黒い外人が孵り、
黒い瞳から青い外人が孵り、
その上空で
夥しい数の父や母が、
騒がしい羽音を立てる、

(なぜ静寂として齎されないのだろう、)




今朝、
青い花が好きだった赤い少女が白い文法の群生する野原を駆けていく夢を見たんだ、
と、傍らの友人に告げる私の体は真っ黒でなぜか直視できない、
空から淡くひかる鱗粉が降ってくる、
なにひとつ比喩ではない浜辺で、


 
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