本の街へ/Seia
駅を降りた時から
熟れた紙の匂いがしていた
一歩踏み出した時から
文字がバラけて押し寄せてきた
(ここは本の街です)
このあたり一帯が
巨大な書庫になっていて
その事実だけで
既に酔いそうになっていて
(ここは本の街です)
歩いては迷い歩いては
迷いを繰り返し迷い歩く
路地裏を抜けて大通りを渡って
雑誌と料理本の隙間に
入っては出て入っては
出てを何度か続ける
途中でピザトーストと
コーヒーを味わったりもして
写真集と画集の間を通り
傾斜のきつい階段を
三階、四階へと上がって
ひとつ、ふたつめの棚の前にきた
背表紙をなぞり、スルー、
な
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