グラタンと呼ばれて/ブルース瀬戸内
 
重い口を開いて言った。
あなたは勘違いしているわ。
あなたはグラタンではない。
あなたの名前はグラなのよ。

私は愕然として言葉がない。
母は躊躇もなく話を続ける。
グラだからグラたんなのよ。
子供にこんなこと言うのは
とても気が引けるんだけど
アホね。父さんにそっくり。

グラだからグラたんなのだ。
グラちゃん的なグラたんだ。
父は居間で大笑いしていた。
父さんにそっくり、てお前
と母にツッコミを入れるも
その後は貝のように沈黙し
今にも泣き出しそうだった。

父さんにそっくりなことが
私は嫌ではないよと言うと
父は泣いてからすぐ笑った。
母はグラタンを作り始めて
失敗したので寿司をとって
星が起きる頃に僕は眠った。
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