「夢の明けぬ夜」/宇野康平
長雨のあがった夜。
三角コーンが馴染みの路を塞いだ。
老年の猫が「帰れ」と言う。
何故いつも猫なのか。
何故。
自分で巻いた煙草を吸いながら、舗装が重なる荒れた道を歩く。
注意を促す下品な電飾。開いたマンホールから漂う不幸。
不幸
ふこう
フコウ
HUKOU
走る子どもが手袋を落とす。片方だけ。
私は何も話しかけぬまま。瞼を閉じる。
身体は「家」を向いている。
猫が下品に笑い「帰れ」と言う。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》
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