わだつみの木/アオゾラ誤爆
かし旅人はあることに気がついた。時間が経つにつれて、花はひとつずつ落ちて、その光を失ってしまうのだった。この花がすべて落ちてしまえば、もう本を読み続けることはできない――。旅人の頭の片隅にちいさな悲しみと焦りが灯った。しかしそれでも旅人は本を読み続けたし、その時間は彼にとって十分に満たされたものだった。
それから永遠のような時間が流れた頃、このふしぎな木の花は、ついに残り一つとなっていた。旅人はそのことに気づきながら、まだ本を読んでいる。たくさん積んできたのだ。彼はたった今読み終えた本を閉じ、次の本を手にとり、開き、一行目を目で追いはじめようとしていた。
そのとき、最後の赤い花が、ぽと
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