わだつみの木/アオゾラ誤爆
た。
旅人が手紙を書き終えてしまうと、あたりはすっかり暗くなっていた。どこか温かい気分に満ちていた彼は、ふいに孤独を感じる。そうだ、ここは広い広い海の真上。友人の声は聞こえない。彼はそっと丁寧な手つきで、手紙を水面へと浮かべた。出来る限り優しく浮かべたはずなのに、手紙はすぐに沈んでいき、吸い込まれるように消えてしまった。あたりはどこまでもしーんとして、真っ暗だ。これではもう手紙を書くどころか、本だって読めやしない。旅人は疲れて、ゆっくりと瞬きをした。
すると旅人の目の前に、一本の木が現れた。
若いのか古いのか、ぱっと見ただけでは判断がつかない。ふしぎに懐かしい感じのする木だ。深すぎな
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