名も無き人/イナエ
むしり取られ山積みされた路傍の名も無き草
人は一括りに雑草と呼ぶ けれど
一本一本取りだし丹念に調べればたいそうな名が有って
いや 持たされて 力芝 車前草 藪枯らし 葛
ああくず 葛餅 葛湯の原剤も此処では屑
屑は再生資源となり あるいは
書き損じた紙切れ同様熱資源
名も無き草の生ゴミ堆肥は石ころ混じりの畑で
生産者名入りのブランド野菜果物に吸収され
名も無き 道の駅に並ぶ
名前はあっても 姿のない生産者
姿はあっても 名も無い雑草
路傍の蓬 荒れ地の文字摺 古典の名草 今雑草
西洋蒲公英 雀の豌豆
沿道の小石 ごろ石 名も無き石ころ
は人の名になり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)